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University of Cádiz / Consejo Regulador(D.O.ヘレス・シェリー原産地呼称統制委員会)技術報告 2003

とりあえず、シェリー樽とはアメリカンオークという方に、この報告について論拠と共に語ってほしい。
University of Cádiz / Consejo Regulador(D.O.ヘレス・シェリー原産地呼称統制委員会)技術報告 2003

以下、University of Cádiz / Consejo Regulador(D.O.ヘレス・シェリー原産地呼称統制委員会)技術報告 2003 の要旨をまとめました。

1.調査概要
•対象樽:1950年代以前に製造され、現在もヘレス地域のソレラ・システムで稼働中の樽 74樽
•対象ボデガ:González Byass、Lustau、Hidalgo、Domecq(Pedro Domecq 含む)、Osborne、Sandeman など、ヘレス主要ボデガを網羅
•目的:シェリー熟成に用いられる樽材の原産地・樹種の特定、および材質が熟成香味へ与える影響の解明

2.調査手法
1.年輪解析(デンドロクロノロジー)
•各樽のヘッド材から薄片を採取し、年輪幅・パターンを計測。
2.化学分析
•樽材から抽出したタンニン類、芳香族化合物(エラジタンニン、セスキテルペン類など)を HPLC・GC-MS で定量。
3.比較サンプル
•スペイン北部(ガリシア地方)、フランス・リムーザン、北米(アメリカンオーク)各産地のオーク材標準サンプルと対比。

3.主な調査結果
1.材種分布
•スペイン産コモンオーク(Quercus robur):64樽(86.4%)
•うちほぼ全てをガリシア地方産と特定
•フレンチオーク(Quercus petraea/Quercus robur の仮説混合):6樽(8.1%)
•アメリカンオーク(Quercus alba):4樽(5.4%)
2.年輪幅パターン
•スペイン産オーク:平均年輪幅 1.1~1.4 mm(高緻密)
•フレンチオーク:1.6~2.0 mm(やや粗)
•アメリカンオーク:2.2~2.8 mm(最も粗)
3.化学的特徴
•スペイン産オークでは、エラジタンニン類比率が高く、加熱分解で生成するロジノール型セスキテルペンが多い。
•これが「熟成庫香」「ドライフルーツ香」と評されるシェリー独特の風味に寄与すると考察。

4.考察と示唆
•ガリシア材優位の理由
→高緻密かつ適度に通気性があるため、アルコール蒸散と酸素供給のバランスに優れ、長期ソレラ熟成に最適。
•少数ながら使用されるフレンチ・アメリカンオーク
→収穫・調達量の関係で補填的に利用。香味は異なるため、シェリーのスタイルにはほとんど影響しない程度に限定的。
•現代への示唆
→伝統的なソレラ・システムを支えてきた樽材は事実上ガリシア産コモンオークであるため、原産地呼称(DO)制度における材質管理の重要性が裏付けられた。

参考
•University of Cádiz & Consejo Regulador DO Jerez–Sherry Technical Bulletin, No. 7, 2003.
•年輪・化学分析データ表、各ボデガ別の樽使用履歴(同報告書付録)

以上が、2003年技術報告におけるソレラ用古樽74樽の材質調査の詳細です。今後の樽調達や保護管理、そしてDOヘレスの品質保証制度整備に活用されるべき知見といえます。