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第5回SBT bottle A@タケモト出題 正解発表


【正解ボトル】ホワイトヘザー White Heather 8年 43% 75cl(1970年代流通/原酒推測蒸留60年代/発売時国内価格5000円/主要原酒:アベラワー)

【テイスターの皆様から頂いたコメント】 第5回SBT ボトルA評価

【平均スコア】89-85-85-82-88-85-85-89-83-85  avg=85.6

【適正価格】20000-5000-25000-20000-5000-28000-8000-8000-9000-18000  avg=14600


タケモトカツヒコ

[opentasting]


タケモトカツヒコ (プロフィール


【出題者スコア】 88 pts


~融合テイスティングノート~

【グラス】木村硝子 古酒 5 oz

【質感・状態】
・発香落ち着いている
・アルコールの発散が突出しておらず、分離した感じはない
・粘性を帯びた甘さ
・下支えに明らかに捉えられるピート(やや土っぽく燻製優先、ヨード煙はない)
・明らかなオールドで据えている

【色】
・やや濃い目の琥珀

【ファースト】
・軽くヒネている
・粘性のある「香味」(黒糖・カラメル・蜂蜜・べっこう飴)→和三盆的ではなくシロップ様
・果実「香味」としては(焼きリンゴ・酸味が穏やかなイチジクの丸煮・杏のジャム)
・下支えに明らかに捉えられるピート(やや土っぽく燻製優先、ヨード煙はない)
・紅茶の「香り」と「渋味」→この渋みがグレーン由来と思わせるが、麦感と甘味が融合した「麦芽水飴」のようにも受け止められ嫌味には受け取れない
・時間とともに若干弱めの瓜・ハーブ・植物を思わせる「香り」

【ミドル】
・ボディは度数からすると豊かで厚み広がりを見せたあと、染みこむイメージ
・麦感は焦げていてピーティ
・木材感はあるが湿っておらず、バーボン的なバニラ~クリーミーな甘味

【フィニッシュ】
・返り鼻抜けとも穏やかだが充実している
・染みこむイメージ
・余韻に瓶内変化で嫌味の抜けたグレーンと認められる要素
・明らかに粘性のある甘さがあるものの、加水の恩恵かベタつきはしない


<みなさまのテイスティングノートに出題者が大いに共感した要素>

【あだもさん】とろりと黒糖カラメルの甘味、アフターにかけて適度なウッディネス

【ガースーさん】黒糖胡桃、コクのある黒糖系シェリー樽 麦芽水飴粘性のありそうな甘さ、口当たりはかなり軽い あんずジャム、バナナ、時間が経つにつれ青い草やハーブ 黒糖を入れた紅茶ハーブ ヨーグルト

【くりりんさん】軽いヒネを感じるオールド香、焦げたカラメル、微かにコルクキャップ系のオフフレーバー、程よいオールドシェリー、ザラメ、みたらし、微かに植物っぽいエグみ

【ゴブちゃん】メロンと花の香り、少し焦がした砂糖麦の甘さ、植物感、旨味のある独特なスパイシー、オイリーで余韻は平坦 舌の上には植物感が残る

【Matsukiさん】少しヒネもある明らかなオールド感カラメル紅茶、蜂蜜、少しレザーと土、ややしっとりした麦感は強め妖艶なニュアンスも伴う高貴なオールドシェリー、奥にオールドピート多彩な香りアプリコットジャム紅茶

【2chの人さん】焼きリンゴ、ハチミツ、白い花乳酸、アルコール感が伸びる、うすくピート、この手のボトルは1本は常備したいタイプです 安心して飲めるウイスキー

【りゅうたにさん】香りはちょっとオールド的 花っぽい、すこしりんご 締まる感じのスモーキーさ すこし酸味

【銀牙さん】青りんご、日本の梨、アプリコット ヒノキ、ハーブ、、メイプルシロップ、枯れたピートスミレの花、水あめ、麦の優しい甘さ、枯れた木とコールタールが混じったようなピート

【シングルモルト見習いさん】りんご、シェリー、ハーブ、やや古い時代のシェリー、スパイス感

【naoskprsさん】いやではないヒネ香、オールド感、オールドピートもしっかり、口に含むとなかなか陶酔感のある香り、りんご、べっこう飴、切りたての白木、アフターにヒノキ


【正解テイスター】

同率1位<明確にブレンデッド一択宣言>くりりんさん、2chの人さん
3位<ブレンデッドが第一候補>シングルモルト見習いさん
惜しい!<主要原酒アベラワーにコメント言及>あだもさん

また多くのテイスターの方が、私も粘性のある甘さがハウススタイルだと思う「ストラスアイラ」を候補に挙げられており、またブレンデッドウイスキーである可能性、同リージョン:スペイサイドモルトへと言及されていました。

いわゆる汎用、国内正規輸入品でも5000円だった本ボトルは、きっと当時の製法原材料由来ではなく、瓶内変化を経たことで初めて得られた魅力もあったものと思われます。

私自身の購入価格も、送料税金込みでも1万円前後でした。

ぜひこの機会にオールドブレンデッドの面白さが共有できればと思います。

【参考】本ボトルは1970年代流通品であることは、同ラベルが掲載された書籍で確認できますが、そうするとアベラワーが主要原酒であったことに疑いはないものの、親会社であったキャンベルハウスディスティラリーズがグレンアラヒ(設立も1967年とギリギリ)を買収したのが1989年であるために、アラヒについては入っていたともいないとも判断できません。スキャパについてはシーバスグループになってからの兄弟関係ですが、スキャパが入っていたかどうかも分かりません。現在アベラワー、グレンアラヒ、スキャパの3蒸溜所のオペレーティングマネージャーはSTUART PIRIE氏です。



<出題ボトルについてと個人的ウイスキー近況>

第5回SBTにご参加いただいた皆様、また企画運営をしていただいたT.Matsukiさん本当にありがとうございます。

毎回同じなのですが、出題の目的といたしましては、自分が今現在最も好きなタイプのボトルをサンプルとして提出し、多くの熱心なテイスターの方々に感想を伺ってみたかったということに尽きます。


今年2013年は、流通ボトル単価が急激に高騰した年となり、だからとはいえ(あくまで全体を見渡した上での私見ですが)仮に1万円~2万円出して買ったボトルから得られる【満足度】は決して従来比較で上がったわけでもないようで、さらに国地域限定、発売箇所限定、特定ボトラー限定と樽の流通は、ボトルで抱えるドリンカーが楽しんで追いかけられる範疇を既に超越してしまった感があります。

そういった「流通に中間的役割を果たす企業グループ」が価格を高騰させ、それに蒸溜所が追随し「限定リリースを増やす」という流れは、商売的には合理性がありますが、従来からの愛好者には辛いことでしょう。


かつてのイタリアンボトラーは少々高くても、既存のラインナップにはなかった少数樽ヴァッティング、高度数、マイナー蒸溜所に関するオリジナルボトリングを行ったという歴史的意義があったように思われますが、今や高価格帯において「なぜか瓶詰め時に大きく変化する果実味」があるという点を除けば、ことごとく「シングルカスク偏重」であることに変わりはなく、まして1万円~2万円という価格帯では、蒸溜所からネゴシエーターが買い受けた時そのままの、シンプルなナチュラルカスクで何の変哲もなく出てくるというのがほとんどです。

味が単調で複雑みや深みがなく、「果実的香味」があればまだそれを好意的に受け止めて香りの部分で【序盤は】楽しめるのですが、嚥下したあとのボディにおいては「麦質からくる膨らみや厚み」というものがなく、アルコール度数のインパクトで押し切られて終わりという、何とも【でんぷん質】を感じられず終わるものが多くなりました。

これは特に近年系の「いきなり果実」になったボトルに多く、ボディを豊かに演出するはずの成分が、何らかの方法で瓶詰め時に(果実香味を示す)エステル、アルデヒド、カルボン酸へと変わってしまったのか、90年代以降主流となっているアルコール産生比率(収量)を向上させた大麦品種【オプティック】およびモルティングの合理化、同じ目的を果たす【液体酵母】の影響でそうなってしまったのか、またさらには入手困難になって長いシェリー樽、リフィルを繰り返す樽木質、ボトラーがもらい受けに用いる樽木質が、エコ観点を重視して質を低下してしまったのか、どれかひとつの要因だとも言えないほどの判断材料が想定されます。


そんななか原材料や製造工程を変えず、より楽しんでいくために、

・熟成とはアルコールの突出、分離をなくすことでもある →瓶詰め後のボンボン保管にあたる瓶内変化を重視。
・マッカランはじめ、ヴァッティングによってボディの迫力、厚さを得てきた蒸溜所がたくさんある →単年蒸溜にこだわらない、ボディ作成を重視した「飲んで決めるヴァッティング(ブレンド)」のリリースをぜひ。
・ブレンデッドウイスキー、ヴァッテドウイスキーの複雑さを楽しむ →シングルカスクリリースを飲み続けてきたからこそ分かる面白さがある。
・同じ値段を出すのなら、旧来普及品でより高品質なものがないかを考慮する →ブレンデッド、ヴァッテドを含めて。

そんな希望を並べたところで、今回の出題解説を終わりたいと思います。


今回もありがとうございました!