ボトルCの出題者は私T.Matsukiでした。
さて、ボトルCの正解ですが・・・・、
ブルイックラディのオフィシャル、蒸留所限定のヴァリンチでした。
BRUICHLADDICH 1992-2010 18yo OB Valinch “ITALIAN JOB” CASK No.012 50.9%
one of 400 bottles
500ml
価格:£55(当時のレートで約8000円)
18年間のバーボン樽熟成の後、トスカーナの赤ワインの樽で数か月フィニッシュしています。
2010年5月10日に、私と妻が蒸留所で手詰めしたオフィシャルのヴァリンチです。
今回の出題コンセプトは、自分が新婚旅行で行ったアイラ島で手詰めしたボトルを、単にみんなで楽しみたかった。
ほぼそれだけです。(笑)
意図を持った出題を、と他の出題者の方にはお願いしているのに主催者がこのチョイスで申し訳ありません。
最初は、以前から皆さんにお伝えしたいメッセージがあり、その意図に見合ったボトルをチョイスしたのですが、
そのために海外から仕入れたボトルが、開けてみると意図が伝わるとは思えないくらいイマイチで・・・。
この際、SBTに賛同して下さった参加者の皆さんに感謝の気持ちをお届けしようと思い立ちました。
強いて出題意図を追加するのであれば、ワイン樽についてでしょうか。
ワイン樽フィニッシュというのは、日本のモルト飲みの間ではあまり人気がありません。
自分も、酸化して悪くなったワインのような香りや、後半のべたっとした甘味が気になるものが多く、あまり良い印象は持っていません。 特に最近のブルイックラディ、マーレイマクダビッドのリリースにはワイン樽が多く、内容もあまり感心しないものが多いと感じています。
ただ、このボトルは、蒸留所で飲んで結構いけるなと思いました。
(現地で飲むとなんでも美味しく感じるという噂もありますが・・。)
良いシェリー樽を思わせるカラメルのような甘さや、熟したフルーツ感やジャムのようなニュアンスも充実してます。
ワイン樽特有の、後半のべたっとした甘味はありますが、樽の良い渋味などにより引き締められそこまで気にならず、帰国後日本で落ち着いて飲んでも結構美味しいと思いました。
そういえばサントリーの輿水さんが引退時に関係者に配ったボトルも、白州をラグランジュの樽で熟成させたもの(1996-2010)だったと記憶しています。
以前に飲ませていただきましたが、かなり美味しかったです。
良いシェリー樽が枯渇する中、最近の良いものはバーボン樽が中心になってきています。
そんななか、シャトー○○でフィニッシュ!といったような付加価値を付けるためではなく、純粋に旨いウイスキーにするためのカスクマネジメントとしてワイン樽を使うのはナシではないと思います。
個人的には、上手に渋味が出せると甘味がのっぺりせず、このボトルのような良いシェリー樽に近いニュアンスになるのではないかと考えています。
他の樽よりデリケートな気もしますので大変かもしれませんが、上手な使い方を試行錯誤していただきたいものです。
さて、皆さんの回答はこちら。
独特な樽感が強く出ているため蒸留所を当てるのは困難なボトルとは思いましたが、多くの方に楽しんでいただけたようで嬉しく思います。前面に出ている樽のニュアンスの好みがイコールこのボトルの好みになっているようでした。
もしワイン樽を指摘できれば、ブルイックラディに行き着く方がいるかもしれないとは思いましたが、ハウススタイルがほとんど感じられないこともありさすがに正解者はいませんでした。
欲を言えば、ワイン樽の影響を感じてくれるテイスターがいてくれても良かったとは思います。
本来はもう少し痒いところに手が届きそうな出題を予定していたのですが。。。
さて、問題の樽に関して、テイスターの皆さんの評価を拝見するとやはりシェリー樽と予想された方がほとんどでした。
メンバーのレベルを考えると、色だけでシェリーと判断したとは思えず、やはり上手に使えば良い甘味と渋味の出たシェリー樽の代わりになる可能性を持っていると再確認させていただきました。
奥にある純粋なシェリー樽っぽくない麦感を指摘されたあだもさん、甘味のニュアンスからカスクフィニッシュと予想されたゴブリンさん、しっかりとしたブドウ感を指摘されたがんちゃんさんは適切なご指摘だと思いました。
また全体として、あだもさんのように明確な指摘はなくともシェリーと予想したもののなんとなく違和感を感じられ、シェリー王道の蒸留所を予想から外した方がした人がわりと多かったのも印象的でした。
そして番外編ですが開栓したての硬さと今後大きく広がる可能性を指摘された2chの人さんのコメントはその通りで、高い経験値を感じました。
主催者としてだけでなく、今回は出題者としての楽しさも満喫させていただきました。
ありがとうございました。
最後になりますが、ヴァリンチはフルボトル1本で500mlしかないため、私の分をナシにしてフルボトルを丸々提供しても一人あたりの量が少なめになってしまい申し訳ありませんでした。
それから、以前に開けて半年後に書いた自分のテイスティングコメント(下記)と比較すると、今回のボトルは開栓数日で小分けしたためかかなり硬かったようで、もう少し早めに開けてからお送りしたほうが良かったようです。
次回出題に向けての反省点とさせていただきます。
以下が、以前に開けた同ボトルを飲んで書いた自分のテイスティングコメントです。(開栓半年後)
・色
赤みがかった濃いアンバー
・香り
アメリカンチェリー、アプリコット、ベリージャム、カラメル、チョコレート、まったり甘い、
甘い香りの奥にほど良く麦感あり、ヴァニラや青リンゴなどバーボン感も奥にある、
時間とともにバーボン感が強まる、樽のウッディネスあり
・味わい
カラメルソースのまったりした甘さからややスパイシーになる、若干の若さを感じる麦感も主張、
ワイン樽特有の後半のベタッとした甘さがあるが、ほど良い樽のウッディネスと渋味で舌が引き締められて深みを感じ、
ベタッとしたまま終わらない。ミディアムボディ。
・余韻
甘味とそれを引き締めるウッディネスと渋味が残る。悪くない。
・加水
急に若いニュアンスが前面に出る。味わいも単調な甘味ばかり気になりイマイチ。
・総評
ベタッとしたワイン樽の甘さが渋味でうまくマスクされており、良いシェリー樽のようなニュアンスを持つモルト。
ワイン樽フィニッシュとわかって飲むと、ワイン樽とバーボンバレルのニュアンスを分けて認識できるのが面白い。
ワイン樽にもちょっぴり未来を感じる1本。
【Good/Very Good】
T.Matsuki