ベン・ネヴィス Ben Nevis 1966 (59% OB.) btl No.128 75CL

タケモトカツヒコ

タケモトカツヒコ (プロフィール


【スコア】BAR飲みのため非公開


【ファースト】:アルコール感しっかり 濃くて赤みを帯びた琥珀 土っぽい 茶色い濃厚なカリントウ 酢酸は無し 木材 ややバニラも 植物感は葉っぱ ミント かすかにメントール コショウ 山椒

【ミドル】:ボディはエッジが立っているほどではないが、膨らむ印象 ナッツ アーモンド バナナの甘み 時間と共にイチゴジャム到来 ややザクロか桃

【フィニッシュ】:鼻抜け 返り 共にビッグ! 全体的に乾いた麦と湿った麦感が共存 アップルパイ 木材 土っぽい(これぞアーシー)


ベン・ネヴィスは1989年にニッカウヰスキー株式会社が買収。

ニッカウヰスキー株式会社は創業当時から、加賀証券社長の加賀正太郎が筆頭株主でした。

彼が病床に伏した1954年、竹鶴政孝とも親交のあった朝日麦酒(アサヒビール)が加賀の所有する株式をすべて引き取り、ニッカウヰスキー株式会社が発行する株式の過半数を占めるに至ります。

しかしながら、全株式を取得して完全子会社化したのは2001年。ベン・ネヴィス蒸溜所の買収はそれに先立って行われました。

この際ニッカウヰスキーは地元の反発をおそれ、ダミー会社を経由して蒸溜所を買収。

程なく事情はバレてしまいますが、地元住民からは閉鎖蒸溜所を再稼動させることで新たな雇用が生まれると、最終的には歓迎してくれたといいます。


せっかくなので、日本においてなぜか誤解が生じていると思われる点について指摘しておきたいと思います。

ベン・ネヴィスは1983年に操業を停止して、ニッカウヰスキーが1990年再操業させたという文節を記載した書籍などもあるのですが、これはどうもおかしい。。。1984~1986年蒸溜のモルトがケイデンヘッド、SMWS、ブラッカダーなどからリリースされているからです。

実際には、

1978年 一時操業を停止

1981年 創業家に当たるロングジョンディスティラリーズと、ビフィーターで知られるWhitbread社が再度オーナーとなります。

1984年 総額2百万ポンドをかけて蒸溜所の改修が行われ、蒸溜所は再操業を開始。

1986年 再び操業停止

1989年 ニッカが買収

1990年 再稼働

1991年 ビジターセンターオープン

という経緯をたどり、1978~1983年が操業停止期間 1984~1986年の間は一部から全部稼働していたと考えられます


さて、本ボトルはザクロや桃を感じさせる大変素晴らしい内容であるのですが、英国のウイスキー評論家の間では1960年代のベン・ネヴィスに否定的な意見が多いです。

有名な書籍にも「1966/1998 51% OB」について「驚くほどはっきりせず、他の1960年代ベン・ネヴィス同様失望させられる」といった辛辣な評価が記載されており、この点、黒ケイデン1965 22yoも好みの分かれるボトルだということ、特に60年代はアーシーなフレーバーが表在化していることを考え合わせると、わからなくはないのですがどうも残念だと言わざるをえません。

Ben Nevis 34 yo 1966/2001 (53.7%, OB, German Market, 209 bottles, cask #4276)

などは欧州でも高評価されており、(個人的には今回UPの日本向けの方がより良いと思います)一概に1960年代蒸溜が非難されるには当たらないと考えます。

ベン・ネヴィスは加水に向かないボトルが多いということはあるにせよ、あまり他者の特に批判的な意見に迎合していると、せっかくのチャンスを見失うという好例だと言えるでしょう。