ボトルDの出題者は私T.Matsukiでした。
さて、さっそく正解ですが・・・・、
BOWMORE 1976-1996 20yo Signatory Vintage #3548,3549 52.6%
購入価格:数年前に海外オークションで20000円程度で購入
シグナトリーのボウモア1976、20年熟成でした。
2つの樽のヴァッティングですが、樽の詳細は不明です。
出題コンセプトとしては、あまり話題にならない1970年代後半のボウモアを評価してみようというものです。
私のざっくりとした認識として、
1960年代以前:素晴らしい唯一無二のトロピカル感
1980年代:パフューム・・・
1990年代:トロピカル復活、アイラらしいボディもある
2000年代:らしいトロピカルもあるがややライトボディで草や紙っぽさもあり
という感じです。
そして問題の70年代に関しては、
前半、特に72くらいまでは、トロピカルに関しては60年代をちょっと弱くしたような印象で、ピートがやや強めでボディのあるものも散見されます。
そして今回のテーマであるその後の70年代ヴィンテージに関しては・・・、あまり飲む機会がなく恐らく10種類程度の経験しか無いのですが、なんとなく70年代アタマからさらに独特のトロピカル感を薄めて、植物感や瓜っぽさなどさっぱりした印象を伴うボトルが多いというイメージを持っています。
また、ピートもあまり強くなく、ボディも比較的軽いものが多いように思います。ボウモアらしい個性は全体的に最も薄まる時期というイメージでした。
ただ、これはあくまで私のイメージで、今まで誰かとそのことを深く語る機会もありませんでした。
そこでこの機会に、たまたま手元に1本だけあった70年代後半のストックでそれを確かめてみようと思ったわけです。
このボトルに対する私のテイスティングノートと評価は以下です。
・香り:
レモン、パイナップルや洋ナシ、小麦粉っぽさのある若めの麦感と草っぽい植物感、ショウガ、バニラ、白い花、奥からスモーク。
・味わい:
軟らかい口当たり、最初クリアな印象で徐々に広がる、熟しかけのパイナップル、洋ナシ、バニラ、ショウガ、熟したフルーツの甘味、コクあり、少し生の木や植物を感じるエグ味、松ヤニ、後半はややオイリーでタールやスモーク、ボディは厚くはない。
・余韻:
パイナップルと木のエグ味、そして松ヤニとピートが口の中に長めに残る。
・加水:
明らかに緩くなるがフルーツは強まり華やかになる、エグ味も軽くなる。加水後も結構好み。
・総評:
スペイサイドを思わせるようなわりと華やかで洋菓子のようなフルーツ感があり、奥からピートは控えめに主張する。
パイナップルのような感じはあるが、ボウモアらしいグレープフルーツのわた+パッションフルーツやマンゴー系トロピカルというのとは違う印象。
紙っぽくなる一歩手前のショウガのようなニュアンスも印象的だった。
やや生の木のようなエグ味を強めに感じたのが少し引っかかったが、全体的にはかなり美味しいモルト。
ピートはそれなりに感じたが、潮っぽさやヨードっぽさなどを感じるアイラらしいピートではないように思う。
【Good/Very Good】
このへんのヴィンテージの特徴かなと思っていた瓜っぽさはあまりなく、完全に私のイメージ通りというわけではありませんでしたが、植物感や控えめなピート、それほど厚くないボディなど、予想通りだった部分も多くありました。
そして何よりアイラと思えないほど島モノの個性には乏しかったです。
ブラインドで最も正解しやすい蒸留所のひとつのはずですが、飲んでみて意外な難問かもしれないと思いました。
さて、このボトルに対するテイスターの皆さんの評価・予想はこちら。
SBTスコア:平均85.6 妥当な金額の平均:17600円
このボトルの個性の中心は、わりと華やかなフルーツ感と思われ、アイラの個性も薄く、そのためかスペイサイド系の蒸留所を予想された方が多かったですね。
ピートに関しても拾われている方は何人もいらっしゃいましたが、アイラを予想された方はいませんでしたね。
ちょっと典型的なものと方向性は違うものの、パイナップル系トロピカル感+ピートで、ボウモアを予想の最後くらいには入れてくる人も何人かはいるかなと思っていたので、ちょっと意外な結果でした。
それから、わりと生の木のようなウッディネスが感じられ、そのあたりからなのかジャパニーズ予想をした人が多かったのも印象的でした。言われてみればジャパニーズにしばしば感じる鉛筆の削りかすのようなウッディネスとは共通点があるようにも思います。
皆さんのテイスティングコメントの中には、ピートだけでなくグレープフルーツのわたやワキガなど、私には拾えなかったボウモアにしばしば使われるコメントも散在していたのは印象的でした。この年代にもハウススタイルが見え隠れしていたのかもしれません。
そんなわけで、蒸留所の正解者はいませんでした。
今までボウモアが出題されて正解者がいなかったことはありませんし、自分も含めファンも多いかなり個性的な蒸留所で、この蒸留所だけはどの年代でも外さない自信があるという人も多いと思います。
そんな中で今回の出題をさせていただきましたが、前述のとおり正解者無し。この年代はボウモア史上最も個性が薄い期間ではないかという、自分の印象の裏付けがとれたように思います。
それと今回飲んでじっくり考えてみて、特にフルーツ感やボディに着目すると、1960年代→1970年代の変化って、1990年代→2000年代の変化にちょっと近いなと思ったりもしました。
大好きな蒸留所のひとつですし、これからもボウモアの変遷を応援しながら見守っていこうと思います。
ストックの薄いところからの思い切った出題でしたが、興味深い結果を拝見できましたし、飲んでいただけて良かったです。
今回も私の出題ボトルをストイックに飲んでいただきありがとうございました。
T.Matsuki