whiskyfunのSerge氏が、ちょうど今日Whiskyintelligenceに「ウイスキーのテイスティングを、もう少し”個人の主観に一貫性を担保しながら”行なうためにはどうしたらいいのか?」という題名で寄稿されていました。
実際のところ、世界で一番注目されているテイスターといっても過言ではないSerge氏のテイスティング論ですので、一部を抜粋してご紹介してみたいと思います(意訳です)。
”特に匿名の場では、「ウイスキーのスコアリングなんて、そんなもの個人の主観でしかないのだから意味が無いだろう」 との意見が散見されています。”
”そもそも一体、主観ってなんだろう?”
”私は口論するつもりはありません。あなたがプロのテイスターとかブレンダーだというのでなければ、ウイスキーのテイスティングをするとき、個人の趣向に左右されるでしょう?”
”どんなウイスキーをテイスティングするときでも、それはあなたの趣向に左右されるのであって、スコアというのはそのウイスキーをあなたがどれだけ楽しんだかの表現でしかありません”
”普通の人であれば、味や感情にアドリブを入れて表現するでしょうし、時間、ムード、形、場所、ガラス製品、一緒に摂取する食物その他をいろいろな要因に依存していますから、一貫しているはずがありません”
”言い換えると、月曜日に80点であったものが、木曜日に87点になることもありえるわけです。”
”ある著名なマスターブレンダー(ホワイト&マッカイの方ではありません)と会って、非常にピーティーなモルトをテイスティングしたときに、「これはロー ランドじゃないな」と言いました。ところがこれはとても優れたブラドノックだったのです。彼にはそれがわかりませんでした。”
”とにかくそんなふうで、テイスター自身一貫していないのですから、(そんな状態で出した)点数など意味はないのです。”
”少なくても質量分析計のようには行きません。”
”でも、その矛盾を減らす方法はあります。”
”それはテイスティングの技術の問題ではなく、方法です。”
”なにより大事なのは、スコアリングが、常に他との比較に基づいていなくてはいけないということです。”
” ただ、あなたが、シングル(1ショット)のウイスキーをも飲んでいないのにもかかわらず、それが85点の価値があるなどと主張することもできません。そん な量ではあなたはムードや場所、周りにいる友人や、一緒にガツガツ食べているペペローニピザを採点してしまっているとしか私には考えられないからです”
”一貫した設定(場所・時間・ガラス製品その他)を行なうこと以上に、他との比較によってテイスティングを行なうことが、私にとって重要だと考えています。”
”どんな新しいウイスキーをテイスティングする前にでも、なにかリファレンスとなる、ベンチマークとなるウイスキーを飲んでみて、あなたの内部スケールを適切に再調整すべきです。”
”それには、あまりバッチが変化するようなものは避けて、一貫している2、3のモルトにすべきです。それでいてメジャーなモルトが良いです。それを何度もスコアリングしてから、実際のベンチマークに用います。”
”例えば、ピーテッドモルトの場合ならラフロイグ10年を、毎回テイスティングの前に少し持参して使うと良いです。カスクストレングスのオクトモアでは機能しないでしょう。”
”ラフロイグ10年がいつもの期待値に感じられないときには、テイスティングセッションをヤメるべきです。”
”これはスピリッツの場合、成立することであって、状況がすぐに変わってしまうワインではこうは行きません。”
”(ウイスキーなら)あなたがビギナーでも、相当な大酒飲みでも、この方法を利用することでスコアの一貫性を保つことができます。”
”100点満点というスケールも、完璧ではないかも知れません。5つの星でも十分なのかも知れませんが、でも私にはこのスケールが必要なのです。”
”私は比較こそが真実であり、テイスティングの能力だけではないと信じています。”
”もしマッカランの若いバーボン樽熟成を2本、続けてテイスティングしたときのように、どちらかが少しだけ良かったと感じたときには、100のスケールが必要になるのです。5ツ星では足りません”
”要約するとこうです”
”Constant settings (location, glassware and such)
Benchmark whiskies (sets scale, check senses, makes relations and proportions between many scores a little more accurate)
Compare similar whiskies (fine tuning, nuances)”
”恒常的なセッティングで、ウイスキーをベンチマークして(スケールを再調整して)、似たウイスキーと比較する”
”それでももし気の狂った人が(彼らは既に攻撃準備が出来ているようです)、なんらか言いがかりをつけて来るならば、私は「自分は一生懸命やっているけれど、機械には成り得ないし、むしろそうならないことが良いことだと思える」と言ってやります。”
”最後に一つ重要なことがあります。”
”スコアというのは、なぜそのスコアになったのかを説明するためにも、必ずテイスティングノートを一緒に添付すべきだということです。”
”なぜGlenWonka 100yoが39点だったのか。”
”テイスティングノートの中身は全て、個人の意見そのままです。でも私たちは「かなり一貫した個人の主観」を提供できると思っています。”