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シェリー樽について


あけましておめでとうございます。

ウイスキーを美味しく飲むことができる環境づくりと維持を目標にやって行きたいと思います。そして今年は原稿をしっかり書きます。。。!


シェリー樽について。

年末年始にTwitter上でもやり取りした内容ですが、簡単にこちらにも書かせていただこうと思います。詳しくはより調査したのち、まとめようと思っている拙著を御覧ください。


シェリー樽とウイスキーの関係については、全部の蒸溜所や全部のボトラーが画一的に取り組んだわけでもなく、あくまでその傾向ということでしか語ることが出来ないようです。


私の個人的な見解に過ぎませんが、これまでのウイスキー生産者、ボトラーのコメントを総合して解釈してみようと思います。

・マッカランやグレンドロナックのコメントを読むと、

両蒸溜所が用いるシェリー(由来)樽は、

→スパニッシュオークの新樽を蒸溜所サイドで制作し、シェリー酒生産者へ預け、シェリー酒の熟成に2(マッカラン)~3(ドロナック)年使ってもらって、返してもらう。

→アメリカンオークの場合は、その新樽を提携ブレンデッドウイスキー生産者へ5年程度預け、アメリカンオーク独特の過剰なバニリン等を滲出させ、のちに上記同様にシェリー酒生産者へ2~3年預け、返してもらう。


大事な点はウイスキーにとっては、スパニッシュオーク材のシェリー(由来)樽のほうが重要だと思っている蒸留所やボトラーが多数あるということです。


ただ単にシェリー(由来)樽だと言ってもそこには差があり、どうも従来のマッカラン、ファークラス、近年ではドロナックといった蒸溜所のほうが、飲んで「高貴」に思えるところがあります。

高低ありますが、スプリングバンクやボウモア、ボトラーでもG&M、ケイデンヘッドの旧ボトルにも突き抜けたものがありました。

その差は何に起因するのでしょう?

樽の材質なのか、詰めるシェリー酒なのか、その両方なのか。。。

今回は樽材に注目してみたいと思います。


このうちマッカランやドロナックは、スパニッシュオークのほうがいいと明言しています。

エドリントングループでは、フィノシェリー樽と謳えば、それはスパニッシュオークでない、ウイスキーにおけるシェリー樽の目的は果たせない樽という意味だとまでコメントしています。

どうもスパニッシュオークのほうが木目的に、アメリカンオークよりも色味が豊かに付いて、オイゲノール(丁子/クローブ)成分もプラスの要素(おそらく高級感)になると思っているようです。

オールドボトル好きの方々にとっては、このあたり実感として受け取れる部分ではないでしょうか? 近年のシェリー樽はどうも魅力的ではないなと思う最たる理由かもしれません。


ややこしいのが、2010年頃、ウチのサイトにもコメントを寄せて頂いたであろうシェリーのプロの方が、「シェリー樽はアメリカンオーク原材料のモノのみである。アメリカンオーク材でないシェリー樽は偽である。」という主旨のことを、他のウイスキーサイト、BARサイトに送りつけたという話。

ウイスキーからシェリー、またはその逆に興味を持つことは悪いことだとは思わないんですが、どうしてか、この方はスパニッシュオーク材のシェリー樽は偽であると言いたいようです。


ウイスキーにとってはスパニッシュオークのほうが魅力的(であると考える生産者もドリンカーもいる)、シェリー酒生産側ではアメリカンオークが主流、という観点を理解しないと議論は平行線をたどることになるでしょう。


ただ19世紀なかごろまで、スパニッシュオーク、栗、榛材がシェリー樽材の中心であり、逆にアメリカンオークは少なかったようです。また樽材はリビルドされることで、200年間は用いられるという文献にも行き当たりました。

鰻のタレのような継ぎ足し要素を前に、アメリカンオークでなければ偽なのでしょうか。その感覚はどうも理解できません。。。が、しかしながら実際、現在進行形で言えば、熟成過程の樽は不活化アメリカンオークがほとんどであるのでしょう。

【参考リンク】

http://d.hatena.ne.jp/barvirgo/20100916/1284624213

>昨日早朝、シェリーの専門家の方からご指摘を頂きました。

シェリーは醸造学的にも歴史的にも、アメリカンオークでないといけないそうで、 ヨーロピアン(スパニッシュ)オークはありえないそうです。

>もちろん分かっていますが、ツイッターでシェリーの専門家さんにそう言われたので書いたまでです。
またヨーロピアンオークのシェリー樽が100%無いという事はありません。
但し、シェリーの専門家曰く、「それは偽のシェリー樽で本当のシェリー樽とは言えない。」という事で、ある意味考え方の相違と言えると思います。
じゃないと、うちの店にも置いてありますが、ヨーロピアンオークのシェリー樽熟成ウイスキーがニセモノって事になっちゃいますからね!

 

http://blog.livedoor.jp/hoshina0121/archives/65444871.html

それと話題になるヨーロピアン(スパニッシュ)オークはウイスキーには色が早くつくという意味で有効の様ですが、シェリーは大量生産されるフィノを作るのに向いておりません。
何故ならタンニンの含有量が多くのフロール形成の阻害物質となる上に、フランス以南であるため、ガリシアとはいえ気温が高いため、長期で使いまわす樽を作るのには向いていないからです。

スペインがECに加盟した1986年以降には、シェリーは樽での出荷は事実上禁止になりました。(ECワイン法・原産地呼称法による。)
これらの理由からもしそれがシェリー樽なら、アメリカン・オーク以外はあり得ず、
現在あるアメリカン・オーク以外のシェリー樽というものは、近代に新たに起こったタイプのもの。という事になるのです。


確かに現在ソレラ・システムの過程で使用されている樽は「不活性化」した、たしかにアメリカンオークであることがほとんどすべてのようです。

しかし、樽材はオークとだけ規定されているのみで、スパニッシュを含めてヨーロピアンオークが使われたとしても違反ではありません。


加えてまたもう一つ、ウイスキー側とシェリー側には、魅力の違いがあります。


ウイスキーにとって「フロール(酵母の一種)」が邪魔であるという点です。→硫黄殺菌

シェリーにおいてはそのフロールの有無は、一部に非常に魅惑的であるという視点があります。


そのため特に近年、一部蒸溜所では従来から、あえて17%以上にまでアルコール度数を引き上げているオロロソを詰めてもらっているのです。このアルコール度数ではフロールは生育できません。


今後も調査を重ねて、原稿にまとめたいと思います。

シェリー側とウイスキー側の視点の違いは、面白いですが、なかなか平行線であった理由が、ようやく分かりました。

輸送樽がたくさんあったのも、1850年前後、スコットランドが世界最大のシェリー輸入国であった理由からのようです。しかしながら一方スペインでは、船舶の製造工程でアメリカンオークの輸入が増え、その利用価値に気付いた。

また一方では輸送に用いられる使い捨てのスパニッシュオーク樽に、ウイスキーに魅惑的高貴なフレーバーがつくことを知った。こういった双方視点の違いが、誤解を生んだかもしれませんし、現在の枯渇したシェリー樽の状況に対する見方も変えてしまったのかもしれません。


このようにウイスキー側からするとスパニッシュオーク材のシェリー(由来)樽は、その高貴な仕上がりにおいて魅力的であるにもかかわらず、シェリー酒生産側においては主流ではないために、ウイスキーにとって都合のいいシェリー樽は枯渇しているのだろうとも受け取れます。

逆にシェリー側がもっとスパニッシュオークを使ってくれれば、美味しいウイスキーが増えるとも推測できるわけですが、近年ディアジオも、アイラフェスボトルで、ヨーロピアンシェリーオークと記載されたリリースを行なっていて、飲むと「独特の高貴さ」があることを、個人的にも実体験しています。

いずれにしても、ウイスキーとシェリー、両者により良い協力関係が広がっていくことが何よりのようです。


1/5 1:00 追記