山崎蒸留所は品質的にも技量的にも、世界トップクラスの蒸留所なのではないかと思う。
先日、2012年の山崎カスクシリーズ(パンチョン、バーボン、シェリー、ミズナラ)がリリースされた。
人気の高いにミズナラについてはすでに完売状態で、シェリーも後を追う形で品薄となっている。
山崎蒸留所は大資本サントリーだからこそのイノベーティブな挑戦、それによる失敗からの学習、
科学的な分析、そして伝統をしっかりと形にしている蒸留所であり、
知れば知るほどサントリー営業サイドの露骨な「広告戦略」に隠れた、現場サイドのこだわり、プライドが見えてくる。
ブレンダーの力量もさることながら、今回のカスクシリーズからは特に樽を使いこなしている印象を受けた。
今回は2012年リリースのカスクシリーズと共に、構成原酒の一部についても紹介する。
山崎蒸留所
THE YAMAZAKI Distillery 2012
山崎パンチョン2012
THE YAMAZAKI PANCHON 48%
SCORE:6/10
香り:白木と少しのえぐみ、アルコール、
そして若葉やハーブのような爽やかさを感じる香り。
すっきりとした甘さがあり、徐々に蜂蜜も感じられるようになる。
味:木材、ハーブ、控えめに蜂蜜や上白糖の上質な甘さ。
甘さ、苦味、樽香のバランスが整っており、くどさの無い味わいが楽しめる。
余韻は程よくドライでスパイシー、削り出した木の香りが鼻に抜ける。
その他:4種類の中では一番樽による影響が控えめ、素直な味わい。
悪いところは無いが、強みも無い。
山崎バーボンバレル2012
THE YAMAZAKI BOURBON BARREL 48%
SCORE:6.5/10
香り:バニラ、紅茶、チャーしたオーク、ミルクチョコレート、微かに溶剤系の香り、
甘さの濃いしっかりした香りで、その後こげ感のあるチャーしたオークのフレーバーが感じられる。
味:スムーズな口当たり、スパイス感の少ないクリーミーな舌ざわりで、バニラ、甘栗、
そしてアーモンドやナッツ系の香ばしさが広がる。序盤の広がりから一気にフィニッシュへ。
後半はカラメルのような甘さと樽系のビターさが残り、ドライで長く続く。
その他:バーボンバレルの影響がしっかり出ているが、小ぶりな樽熟成から
発生しがちな樽感のくどさはうまく抑えられており、よくまとまっている印象を受ける。
山崎シェリーカスク2012
THE YAMAZAKI SHERRY CASK 48%
SCORE:7/10
香り:濃厚な甘さを感じる香り。黒砂糖、黒蜜、胡麻ダレのかかった蕨餅。
少しざらつきがあり、時間と共にレーズンやプルーン、果実系の酸味も感じられる。
木の樹液やほのかにハーブのような香りもある。
味:濃厚だが口当たりは柔らかい。中間はややのっぺりとしているが、
酸味と渋み、苦味のバランスがよく、レーズン、ベリーチョコレート、黒蜜、コーヒーと
シェリー樽由来のフレーバーと甘さを楽しめる。余韻はオークと程よい苦味が長く残る。
まとめ:近年詰めで1万円以下の販売価格とは思えない、バランスの良い濃厚シェリー。
アメリカンオークの長熟シェリーには流石に及ばないが、それでもこのクオリティは流石。
山崎ミズナラ2012
THE YAMAZAKI MIZUNARA 48%
SCORE:7/10
香り:ミルクチョコレート、ミルクティー、クリーミーで上品な甘さがある。
続いてオレンジママレード、木の渋み、香木、ハーブ、カシューナッツ、
サルタナレーズンのような酸味・・・厚みのある甘さと酸味のある複雑な香り。
味:甘酸っぱさのある上品な味わいが柔らかく広がる。
とろりとした粘性のある口当たりで、アーモンドパウダーを振ったケーキ、オレンジクッキー。
洋菓子のようなクリーミーな甘さと、ナッツやほのかに柑橘系のフレーバー。
余韻は程よくビターで上品、バランスの良い味わい。
その他:サントリーのミズナラ独特のフレーバーが全面に感じられる。
しかし1stリリース等にみられた毒々しいまでの香木感、樽感は形を潜めてしまった。
<総評>
全体的に良く出来ており、どれを購入してもそれなりに楽しめるレベルに仕上がっているが、
個人的に買いはシェリーカスクかなという印象。
ミズナラはオークション等で4~5万の価格がついているらしい。2万でも高い印象だが・・・。
<おまけ、その他の原酒>
蒸留所限定 山崎シングルカスク1986
シェリーバット 52%
THE YAMAZAKI Single cask 1986
SCORE:8/10
香り:フレッシュでアタックの強い香り、ブランデーのような芳醇な甘さ、
レーズンの酸味、渋み、加水で華やかな甘さ、アタックの強さは収まり上品なシェリー香に。
味:古いウェアハウスのような甘さと古びた香りが口の中に広がる。
カカオ、チョコレートが勢いよく続くが、ドライ感が強く、口の中の水分が奪われていく。
甘さは黒蜜やカラメル系で、加水でレーズンやプルーン、熟した黄桃、ベリーティー。
潤沢なフルーツ感が目覚めてくる。余韻は長くフルーツの戻りがある。
その他:加水が必要だが上質、素晴らしい。
蒸留所限定 響17年構成原酒 スモーキー原酒 49%
SCORE:7.5/10
香り:アイラ系というよりもアードモア等の内陸でヘビーピートなボトルと共通するような、
スモーキーさ、ピーティーさがあり、アルコールも感じるが、裏から蜂蜜のような甘さ、
時間と共にスモーキーさが落ち着き、麦や微かに柑橘系のような香りが開いてくる。
味:しっかりとしたピートを感じる。
麦、オレンジピール、ザラメ、加水の開き方はまあまあだが、
ピートがうまく乗っており、パンチがあって実に旨いモルトに仕上がっている。
余韻はスモーキーで、鼻にもしっかりと抜けてくる。秋の収穫後の田んぼ・・・。
その他:レベルの高い響構成原酒シリーズの中でも、このスモーキーと、シェリー原酒の2つは別格。
某バイヤーさんと同時に試飲し、これならボトリングしたいねと話題にもなった。