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第1回SBT Sample No,D@くりりん出題 正解発表

テイスターの皆さま、第一回のテイスティングお疲れさまでした。
また、主催者のTMさん、お忙しい中これほどしっかりとした取りまとめをしていただき、ありがとうございました。
今日の結果発表には時間を忘れて見入ってしまい、クリーニングを取りに行きそびれてしまいました^^;。

※テイスターの皆様の評価はこちら

それでは、Sample No,D くりりんの出題ボトルの正解を発表します。
(もうほとんど出ているようなモノですが。)

正解は・・・

 

グレンモーレンジ・アスター 現行品
度数:57.1%
価格:6500円前後
樽:バーボンバレル(デザイナーカスク)

SBTスコア:87.4点
SBT価格:14200円

(SBTスコアは全員の平均点、SBT価格は全員の妥当価格の平均。)

熟成年数は不明ですが、使用されているデザイナーカスクの歴史をみると、
アスターの前身であるアルティザンが熟成年数9年で2004年にリリースされていますので、
その4年後にリリースされたアスターには、おそらく10~14年クラスの原酒が使われているものと思います。

また、多くの樽をバッティングしたボトルになりますが、味にはどこか統一感があり、
シングルカスクと言ってもいいくらいよどみが無く、蒸溜所のハウススタイルを声高に主張しています。
グレンモーレンジ(ラムズデン)は、モルトの味は60%が樽で決まると言っていますが、
目指したかったモノをここまでしっかりと見せ付けられると、ただただ納得するしかありません。

 

皆さんのテイスティングコメントをみると、まず正解者としては

射命丸さんがドンピシャの正解。
TMさんは、もうほぼ正解ですが、なぜそこまで出ていてアスターが出なかった・・・というニアピン賞。
ガースーさんも蒸溜所を正解されています。
おめでとうございます!(何もありませんがw)

ただ、全員がほぼ同様の特徴を捉えたテイスティングをされており、連想する蒸溜所は違えど、
Whisky linkのテイスター勢の能力は、やはり伊達ではないなと感じさせられます。

また、全体的に見て総じて高評価ですね。90点以上も何名かいらっしゃいます。
価格的にも1万円以上という評価が大多数であり、コストパフォーマンスに優れたボトルであることが改めて証明される結果となりました。
樽の印象については、下でまとめて述べますので、ここでは省略するとして、それ以外のコメントを見ていくと、
完成度が高く、酒質がクリアであることや、ボトラーズのシングルカスクを連想された方が多くいました。
上記でも述べたとおり、バッティングでこれだけの統一感が出るというのは、モーレンジ社の研究の成果であり、
オフィシャルボトルが目指すべき姿のひとつなのではと思います。

 


それでは私のテイスティングと、出題の意図になります。

【テイスティング】
香り:グラスに注ぎたては無機質な、アルコールや木のえぐみ、微かにはちみつのような甘さを感じる程度だが、
徐々に溶けたバニラアイス、カスタード、アップルパイ、粘性のある甘さとりんご感の漂う香りとが立ってくる。
また、ペパーミントの爽やかな香りもある。
若さゆえのトゲトゲしさがあるが、それを補って余りあるバーボン樽由来のフルーツ感、樽が強いためか、
乾燥した牧草や白木のようなえぐみがどうしても残る。しかし加水で緩和される。

味:粘性とスパイスを感じる口当たり、勢いをもって広がり、香りよりもカスタードやはちみつのような甘さが濃く感じられる。
中間は木の樹液、やや荒い、注意深くするとバーボンらしい味わいも残っている。
その後、後半にかけてフルーツ感とさつまいもの黄色い部分のような甘さが盛り上がる。煮たりんごや安寧芋のような印象。
余韻は樽由来のほどよいビターさとスパイシーさがあり、後半の甘さにグレープフルーツの戻りが合わさって長く続く。

総評:全体的な印象としては、荒さがやや目立つボトルでもある。
これは、バーボンホグスヘッドではなく、バーレル樽を使い、少ない期間で樽由来のフレーバーをしっかりつけているため、
その分樽の呼吸による酒質の変化が少なくなるため、若さゆえの荒さが残ってしまっているものと思われる。
しかし樽の質が良いので、その分フルーツ感が豊富で、オーク材のチャーや染み込んだバーボン由来と思われる
微かにトロリとした樹液のような口当たりも感じられ、荒さが個性の一つとして感じられる、良いバランスに仕上がっている。


 

ボトルの特徴としては、これはもう皆様テイスティングでバーボン樽の印象を捉えていただきましたが、
まさにバーボン樽の印象、それも良い印象が前面にあり、Mrバーボン樽と言っても差し支えのないボトルです。
実は今回の出題の意図は、まさにその”バーボン樽の印象”にあります。
現在、蒸溜所の現場では、良質なシェリー樽の入手がますます難しくなり、シェリー樽を売りにしてきた蒸溜所の現状は、
それはそれは厳しいものであることは、異論の余地はありません。

一方で、各蒸溜所は現状の打開策として、米国のバーボン法の関係上、安価で手に入りやすいバーボン樽の使用比率を増やしてきています。
同時に、フィニッシュ系、ワイン樽等の異文化からの交流も行われ始めていますが、
今後のトレンドになると予想されるのは、間違いなくバーボン樽です。

コストが安いことは勿論、その材料であるアメリカンホワイトオークは、材質の特性から
地元ヘレスで取れるスパニッシュオークをなげうってまで、シェリー樽の材料として重宝され、1960年代モルトの黄金期を築いた立役者です。
そのアメリカンホワイトオークが今なお使われているのが、バーボン樽です。
今回のアスターをはじめ、旨いバーボン樽のモルトから、どこか60年代モルトのフレーバーを感じるのは、このホワイトオークによるところが大きいのではと考えられます。

話が少しそれましたが、これらの情勢を加味すると、今後もモルトを飲んでいく際、またこれからモルトを飲もうとしている人が、必ず通るのが、バーボン樽のフレーバーの特徴をどう捉えるかです。
よく雑誌等で書かれている内容は、バニラ、柑橘系のフルーツ、スパイス、ハーブ系の爽やかさ、微かなジンジャー・・・ですが、
ウィスキーは読む以上に飲んで経験してこそナンボです。バーボン樽を学べるボトルが必要となることは明白です。

私は、まさにそれがグレンモーレンジアスターだと考えています。

SBTは通常のとおり飲むなら、家飲みテイスティングの最強のサンプルケースです。
今回の出題は、そのボトルを参加者がラベル酔いせず、各々の環境でしっかりテイスティングすることで、どう評価していただけるか、
そしてバーボン樽の特徴はどう表現されるのかを確認したく、第一回目の出題とさせていただきました。

なお、バーボン樽のよい影響が出ているボトルは、ボウモア・テンペストやラフロイグ・カスク、グレンリベット・ナデューラ等、
オフィシャルからリリースされているボトルでも複数ありますが、
ここまでこってりとバーボン樽なのは、グレンモーレンジアスターだけであり、上記のボトルについては、
次のステップで飲むことで、より蒸溜所のフレーバーと樽によるフレーバーがわかりやすいかなとも思います。

楽しんでいただけましたら、幸いです。


 

最後に、余談となりますが・・・。
今回、私は3月17日の自転車の大会に出場するまでは、酒を控えてカラダづくりに専念していましたので、
大会後に心おきなくテイスティングしようとしていたところ、見事に風邪をひいてしまい、
正直なところ、味覚のバランスがかなり狂った状態でテイスティングを敢行したため、
SBTの趣旨とは大きく外れたテイスティングをしてしまいました。
主催者のTMさんはもちろん、せっかくサンプルを出していただいた皆様には大変申し訳ない限りです。

この場を借りて、謝罪いたします。

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