三鍋氏の著書は、ウイスキーというお酒で得られる「官能・覚醒」を極めていくという点で、私としても素直に共感できる一冊でした。
輿水精一氏「ウイスキーは日本の酒である」は少しベクトルが異なり、ウイスキーの生産現場とマネージメント、その考え方というものも記されていて、まさに現場の温度がわかる一冊だったと思います。
少しづつ感想を書いていこうと思うのですが、冒頭部分に、日本におけるウイスキーの立ち位置が書かれていたこともあって、合わせて国税庁「酒のしおり」平成23年版を読んで見ました。今回はその内容をご紹介させてもらおうと思います。
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凄まじく減少してきたウイスキー消費量が、2009年に上昇に転じているのがわかります。「しょうちゅう」はウイスキーに対して、まさしく逆相関です。ブランデーの落ち込みも見ていて辛いところ。ワイン(果実酒)と連動しないのは健康志向との融合でアピールしたからでしょうか。
興味深い統計です。成人一人あたりウイスキー販売・消費量は、東京についで、札幌・仙台が同率2位。福島県も1.0と大阪0.8よりも多い量です。まさか人口の少なさと相まって私一人で引き上げたわけではないでしょう。。。
蒸溜所の所在と関連すると思いきや、東京から以西は苦戦。
やはり気温との相関なのかもしれません。
下手な書籍を読むよりもわかりやすく、酒の定義・製造工程をまとめた図が添付されています。行政側がどのように酒造りをとらえているか、また呼称しているかもよく理解できます。
酒母と書いて「しゅぼ」。酛(もと)とも呼ばれる。「酵母にはブドウ糖をアルコールに変える働き、すなわち発酵作用があるものの、酒蔵で扱うような大量の米を発酵させるためには、微生物である酵母が一匹や二匹ではまったく不十分で、米の量に見合っただけの何百億、何千億匹もの酵母が必要となる。だが、実際の酵母の数を数える単位は匹ではなくcellという。こうした状況のなかで酒蔵では、アンプルに入っている少量の協会系酵母を特定の環境で大量に育てることになる。このように大量に培養されたものを酒母(しゅぼ / もと)または酛(もと)という。wikipedia」
日本酒のもろみ(醪)については酒税法第3条14項(もろみ:酒類の原料となる物品に発酵させる手段を講じたもの(酒類の製造の用に供することができるものに限る。)で、こし又は蒸留する前のもの(こさない又は蒸留しない酒類に係るものについては、主発酵が終わる前のもの)をいう。)に定義されており、もろみから液体である酒を搾り出して残った固形物が酒粕となり、漬物・甘酒・酢の原料に使われる。なお、沖縄の「もろみ酢」はクエン酸を多く含む泡盛の酒粕を原料に使用し、これを酢酸発酵して製造している。
醤油のもろみ(諸味)から液体を絞り出す前の固形物は、「しょうゆの実」と称され、山形、新潟、長野、熊本、等では、そのまま食べたり調味料代わりに使用される。しかし通常は搾ったあとの固形物を醤油粕として処理してしまうため、有効に利用する方法が模索されている。wikipedia
生酒、原酒の定義も明瞭。原酒でも火入れはする場合があるようです。
添加物の追加が「もろみ」に対して行われていることもわかります。火入れ前の清酒段階ではないんですね。
アミロ菌:糖蜜のような糖質原料はそのまま酵母によって発酵される糖分を含んでいるので、そのままあるいは適当な糖濃度に水で稀釈すれば使用できます。でんぷん質原料はそのままでは発酵できないので、麹、アミロ菌酵素剤あるいは無機塩にょってでんぷんを糖分にかえてから発酵させる必要があります。粗留アルコールを原料とする場合は、糖化工程も発酵工程も不要で、蒸留工程のみでアルコール以外の不純成分を分離して精製します。引用
焼酎に馴染みのないウイスキー好き(私)には勉強になる単式蒸留方法。
蒸きょう(じょうきょう)とは、水分を吸った米を蒸すことで. その米のでんぷんをアルファ化し、麹菌が造り出す糖化酵素で分解を進めやすくします。 また、米を殺菌する意味もあり、その後の醸造過程を安全に進める意味もある。
麹(こうじ)とは、米、麦、大豆などの穀物や精白するときに出来た糠などに、コウジカビなどの食品発酵に有効なカビを中心にした微生物を繁殖させたもの。日本酒、味噌、食酢、漬物、醤油、焼酎、泡盛など、発酵食品を製造するときに用いる。ヒマラヤ地域と東南アジアを含めた東アジア圏特有の発酵技術である。「こうじ」の名は「かもす(醸す)」の名詞形「かもし」の転訛。漢字では「糀」とも書く。
焼酎の発酵は一次もろみ(酒母)と二次もろみ(本もろみ)に分けて行われます。 一次もろみは麹と汲水を原料とし、これに培養酵母を添加して純粋で強健な酵母を多量に培養するとともに、二次もろみに必要な酵素とクエン酸の溶出を目的とします。 二次もろみは一次もろみに主原料と水を加えて、糖化と発酵を並行して行うことが目的。
本格焼酎は二次仕込みで蒸留しますが、泡盛は一次仕込みのもろみをそのまま蒸留する、すなわち全麹づくりというところが両者の大きな違い。引用元
本格焼酎とは?:本格焼酎は酒税法上の分類ではかつての乙類、現在の単式蒸留しようちゆうに当たります。従来、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行規則第11条の5の規定によって、乙類(単式蒸留しようちゆう)であれば本格焼酎と名乗ることが許されていました。しかし、2002年11月1日に従来の乙類焼酎=本格焼酎から一歩踏み込んだ規定が定められました。前提条件である「乙類(単式蒸留しようちゆう)であること」というのは変更なし。
簡単にまとめると
・穀類、芋類を原料や麹に使用している。
・清酒かす(酒粕)を原料に使用している。
・政令で定められた砂糖と米麹、水を使用している。
上記に該当しない場合は、穀類もしくは芋類と穀類麹もしくは芋類麹が、水を除いた原料の50%以上の重量を占めているという基準。
なお、「泡盛」の表記については従来より以下の基準。
・黒麹を用いた米麹と水のみを使用している。
赤ワインと白ワインの違いに圧搾、後発酵の有無。
しっかり「ピートくん蒸」、添加物に関する記述もあります。
ウイスキーとは離れたお勉強もしてしまいましたが、さすがに国税庁。とても分かりやすい工程図でした。
(続く)